10月29日（土）：資料保存ワークショップ番外編「特別な日。山野上禮子先生のお道具たちがやってきた！」
この日は、 いつもの番外編とは異なります。
ブラデル製本の作業をお休みしての
とても大事な、ものことあとりえ一頁にとって歴史的な日となりました。
この資料保存ワークショップを主宰して下さっている堤美智子氏。
そのルリュールの師匠である山野上禮子先生は、1976年から5年間ベルギーの国立高等建築視覚芸術学校（通称la Cambreラカンブル）でルリュールとドリュール（金箔押し）を学ばれた後、製本家として枚方にアトリエを構えておられた方ですが、
今年の5月にお亡くなりになりました。
アトリエには山野上先生の使われていたルリュール用の貴重な道具や器具が残されたままとなりました。
堤氏から、その貴重な道具類をうちに置かせてもらいたいと相談があったのは夏ごろだったでしょうか。
管理人の私の技術はそのような道具を使わせて頂けるまでに到底至らなく、
遠慮をしていたのですが、
堤氏やメンバーのみなさんに使っていただける、
そして、この道具を使いたいと人が集まってもらえたら、という明るい展望につながり、
恐縮ながらもお引き受けすることにしたのでした。
9月には実際の道具や、ルリュール作品を見せて頂きに番外編のワークショップメンバーとともに山野上先生のアトリエに訪問しました。
ご遺族の方にもご挨拶させてもらいました。
中でもメインの「KRAUSS」と書かれたドイツ製の大きな断裁機は、まさにヨーロッパの古い製本工房を連想させる存在感。
そこに、大きな金属製のプレスやエトー。
これらの搬出を一般の運送会社に依頼するのは難しい・・・
大まかに寸法を測って、相談するはわが父。
うちは屋号にひっそり「旧永田製作所」と入れているのですが、以前は金属加工会社をしていたころの社名です。
曾祖父の時代は鋳物、祖父の時代からトラック部品のプレス加工、アルミコルゲートパネル製作、そこに父の代でロートアイアンも製造。
廃業こそしてしまいましたが、父は金属の扱いに慣れており、今も細々ロートアイアンの小品を作っています。
会社経営時代からの付き合いある、AKI鉄工所さんは、
大型建築物製作、映画関係やアミューズメント施設の展示品、ロートアイアン、金属以外もなんでも手掛ける凄腕職人集団。
ここ以外にないでしょう！
多忙の合間を縫って、ちょうど番外編を予定した、この10月29日の午前中に枚方からの搬出の調整をしてくださいました。
住宅街にUNIC（クレーン付きトラック）登場！
職人のおっちゃんたちの慣れた腕さばきで、あっという間にアトリエから道具類は運び出され、クレーンで次々と吊り上げられトラックへ。
空飛ぶ断裁機はなかなかの見ものでした。
昼過ぎに、ものことあとりえ一頁へ無事搬入完了。
ギリギリ寸法の入口も、知恵の輪のようにあちこちずらしながら、
大きな断裁機が魔法のように運び込まれました。
一度ばらした断裁機も難なく組み立てられ、おまけに京大の活動部屋から移動させて使っていたハンドルの壊れたエトーも、その場のありものの道具でちょちょいのちょい！と
直してくださいました。感激です！
午後。ちょうど、引き上げられる職人さんたちと番外編メンバーも会うことが出来たのも、
私としては何とも言えないうれしさ、熱いものがこみ上げました。
この日の午後は、番外編のメンバーに、堤氏と山野上先生のアトリエに通われていた岐阜のH氏も加わって、搬入された机や道具類を作業のしやすさを考慮し、みんなで配置替え。
道具類の大移動です。
甲斐あって、見違えるようにあとりえ一頁は変身しました。
山野上先生の使い込まれた飴色の道具たちの存在感はとても大きい。
一気に製本工房のような、アトリエらしい”あとりえ”になりました。
みんなが辿ってきた道が、今ここに一つに集結したような気持ちで
この日、番外編メンバーを見送った後もしばらくあたらしい”あとりえ”を
ぼ～っと見入っていた管理人・小梅でした。
ものことあとりえ一頁の１Fの”あとりえ一頁”は、
これまで梅仕事や、裁縫など様々なワークショップを開き、やがて資料保存ワークショップ番外編をメインに行うアトリエ空間へと変遷しました。
11月からは、本とその周辺について実践しながら学ぶ専門的なアトリエへと、
あたらしい一歩を踏み出します。
librarianのための資料保存と
図書の修理・修復とルリュールのアトリエとして。
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