7月2日(土):資料保存ワークショップ番外編【修理の日】「実験!表紙クロスのクリーニング」

6月から始まった資料保存ワークショップ番外編【修理の日】。
スペインの70年代の画集の修理を依頼されて始まった会です。

患者さん(画集)の症状は、

ーーー
背外れ
綴じ糸ゆるみ
表紙クロスのカビ、シミ
ーーー

このようなご様子。

綴じ糸が本文の重さ厚さに対して細すぎる、ということで
綴じ糸は9割以上つながった状態でしたが、綴じ直しをすることにし、
表紙・背・裏表紙のクロス張りボードと本文を外し、
本文から綴じ糸を抜き取り、お掃除手袋でクリーニング。
というのが前回6月4日(土)の治療(修理)工程でした。

詳しくは、いつもの
活版印刷所サイト > WEB MAGAZINE  
をご覧くださいね。


「京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]67
新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録」



クロス張りの表紙・背・裏表紙は、美しい色見返しがしっかりと接着されていて、ボードも厚みがありしっかりしたもの。
新しいクロスとボードにしてしまうという方法もありますが、
依頼者からはそのまま使ってほしいとのことで、状態も良いのでこのまま使いたい。
だけど、クロスはカビとみられるようなシミや汚れ、黄ばみでかなり汚れています。

「可能な範囲できれいにしたい!」

私たちの思いです。
というか、このようなクロス地のシミやカビがどの程度落とせるものか
試してみたかったのです。
資料保存の観点からは、薬剤はほぼ使いません。
糊やボンド類もできる限り自然なもの、可逆性のあるものを使用しています。
なので、図書館の修理だったらこんなことはできない!ってことを
実験に行わせてもらいました。
まるで夏休みの自由研究です。

カビ、シミを目立たなくすることに関しては、漂白剤を使うということを以前よりちらほら情報を得ていました。
これはもちろん図書館関係ではなく、個人で改装をするとか、古書店さんの話だとか。
このワークショップを主宰する堤さんも、以前ご自身の所蔵する古書の改装で本文紙を1枚ずつハイターを水で10倍に薄めた液にフローティングさせて、本文紙をきれいにしたと仰っていました。


図書館員の視点からはちょっと過激な手法!
でも今回はそのようなこともチャレンジさせてもらえるようです。
なんせ依頼者は・・・私の父ですので。

ということで、
まずは弱アルカリ性洗剤を使ってのクリーニングからはじめました。




初めに使ったのは、生協のお掃除用ウェットシート。
「除菌 重曹電解水 食卓&リビング用クリーナー」

こちらで表紙、背表紙、裏表紙のクロスを優しく拭き取ります。





まずは目立たないところでおためし。
カビ菌を拡散させないように、は少し吹く度、シートの拭く位置を変えたり、
新しいシートに変えたり。

カビのように見える斑点のシミは、
カビではなく空気中や触れた何かに含まれる微粒子状の金属が空気中の水分に反応してサビたことによるシミ「フォクシング」かもしれない、とはメンバーIさん見解。

父の絵の師匠から頂いた画集なので、ところどころに油絵具と思われる汚れもあります。
絵の具汚れはシートに若干吸着されているようでした。




ただ、背表紙の黒い印字された文字に滲みが見られました。




ここから慎重に。。。

軽くシャワーを浴びたかのように表面はこざっぱりと汚れが取れたように見えます。


今回は弱アルカリ性洗剤のマイペットをさらに5倍に薄めた液を浸み込ませたウエスで、
まずは一部分で実験です。


①霧吹きで液を吹きかける



②液を含ませたウエスを当ててプレス
 


 → ①②共に乾いた布を当ててプレスし、吸水。
   ※この時、プレスしやすいように、外した本文全体を紙で覆って挟み込んで厚みを持
    持たせてプレスしています。



この2パターンをまず場所を変えて実験。
・・・あまり目立った違いはないようでした。
5倍希釈は、手についた感触も、水!?というくらいやさし気。
だからかなぁ。
だからと言って原液を使うのはちょっと恐ろしいし。
事前にお掃除シートで拭き取ったところからも、さほど大きな変化を感じなかったのも事実。

まだ若干湿り気もあるので、今回はここで終了。

話し合いの結果、次回はハイター10倍希釈の液を使用してのクリーニングをしてみようということに。
おっかなびっくり。
でも楽しみ。




次回の「資料保存ワークショップ番外編【修理の日】」は、
8月にメンバーのみ開催の課外活動を経て、


 9月3日(土)
 13:00~
 途中参加途中退場可。

の予定です。


お問い合わせは、こちらまで。
atelier.1page★gmail.com
(★マークを@に変えて使用ください。)


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